おかざき社会福祉士相談室
社会福祉士とは
- 「この法律において社会福祉士とは、(略)日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(略)との連携及び調整その他の援助を行うこと」(『社会福祉士及び介護福祉士法』第2条)と、規定されています。
相談室の業務
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- ・障がい者・高齢者虐待対応相談
- ・障がい者自立支援相談
- ・成年後見制度利用相談
- ・その他、福祉相談一般
相談室利用方法
- まず、電話等でスケジュールを調整後、来室下さい。
相談料
- 全て無料です。
成年後見制度について
成年後見制度とは
- 認知症や知的障がい、精神障がい、高次脳機能障がい等で、判断能力が不十分な方々は、ご自分で不動産や預貯金等の財産を管理したり、諸々の福祉サービス等を利用する時に契約を結んだり、或いは日常生活に必要なサービスを利用する契約を結んだりするときに、困難なことが多くあります。また、悪徳商法の被害にあうリスクを抱えながら生活をしています。
このような判断能力の不十分な方々を保護し、権利を擁護するのが成年後見制度です。
成年後見制度は二本立て
- 成年後見制度は、大きく分けて任意後見制度と法定後見制度の2つの制度があります。
1.任意後見制度
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しくみ
- ①対象者=判断能力の正常な人
- ②受任者=特別な規定はない(自分が信頼している人)
- ③契 約=公正証書で行う
- ・任意代理契約
- ・任意代理契約
- ・任意後見契約
- ・死後事務委任契約
- ④任意後見契約の発効
- ・本人の判断能力が低下して、家庭裁判所より任意後見監督人が選任されたとき
メリットとデメリット
- ①メリット
- ・自分の将来を信頼する人に委ねられる
- ・契約内容が法務局に登記されるので、公的に証明される
- ・任意後見監督人が選任されるので、任意後見人の業務をチェックできる
- ②デメリット
- ・本人の判断能力の低下を把握できない可能性がある
- ・任意後見人に取消権がない
- ・任意後見人と任意後見監督人の双方に報酬が必要になる 等々
2.法定後見制度
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しくみ
- ①対象者=判断能力が低下している人
- ②類型
- ・後見=判断能力が欠けているのが通常の状態の方
- ・保佐=判断能力が著しく不十分な方
- ・補助=判断能力が不十分な方
- ③申立人
- ・本人/配偶者/4親等以内の親族/任意後見人/市町長 等
- ④後見人等候補者
- ・親族後見/専門職後見(弁護士・司法書士・社会福祉士等)/法人後見(社会福祉協議会・NPO法人等/市民後見
制度利用の流れ
- ①申立ての準備
- ・申立人/後見人等候補者/申立費用の負担/申立書類の作成者を検討する
- ②家庭裁判所への申立て
- ③審判
- ・後見人等の選任
- ・東京法務局への後見登記
- ・登記事項証明書の発行
- ④後見活動
- ・身上監護
- ・財産管理
- ⑤後見事務報告
- ・家庭裁判所による後見監督
- ⑥後見事務の終了
- ・本人、後見人の死亡、本人の能力の回復
- ・終了報告
- ・管理財産等の相続人への引継ぎ
3.後見人等の業務
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身上監護
※本人意思尊重義務、身上監護義務が課せられている - ①日常的見守り活動
- ・定期的(毎月1回以上)な面談による本人意思の確認
- ・本人の心身状況、生活状況等の把握
- ・生活費等の持参
- ・施設、病院関係者等との情報交換 等
- ②日常生活の維持に関すること
- ・生活の維持に必要な契約の締結、解除
- ・電気、ガス、水道等、ライフラインの供給契約締結、解除
- ・日常生活用品等の売買契約、解除
- ・町内会費等の支払い
- ・住民登録、生活保護申請等の手続き 等
- ③介護・福祉サービス利用等に関すること
- ・介護福祉サービス、障がい福祉サービス利用に関する契約の締結、解除
- ・本人意思の確認
- ・サービス提供状況の見守り、苦情申立て
- ・ケア会議等への出席、サービス計画への意見具申
- ・要介護認定申請、障がい程度区分認定申請
- ・サービス利用料等の支払い、高額介護サービス費等の本人負担額軽減申請
- ④施設への入退所、処遇の監視等に関すること
- ・施設等の情報提供、本人意思の確認
- ・施設入所契約の締結、解除
- ・サービス提供状況の見守り、苦情申立て
- ・ケア会議等への出席、サービス計画への意見具申
- ・身体拘束等に関する対応
- ・施設利用負担金等請求内容の精査
- ・施設利用料等の支払い、施設利用負担金減額申請 等
- ⑤医療に関すること
- ・診療、入院、退院、転院等に関する契約締結、解除
- ・医師からのインフォームド・コンセントのインフォームド部分の対応
- ・身体拘束等に関する対応
- ・医療費の支払い、高額療養費、重度医療費等の支給申請
- ⑥関係機関、親族等との連絡調整、情報交換
- ・本人の心身状況の情報共有
- ・親族等との連絡調整
- ⑦その他、本人の権利擁護のための身上監護に関すること
財産管理
※善良なる管理者の注意義務が課せられている(善管注意義務) - ①預貯金、有価証券等の管理
- 通帳記帳による入出金チェック
- ・預金通帳、証書等重要書類保管
- ・株式、有価証券等の管理、配当金・償還金等の受領 等
- ②定期的(臨時的)収入に関すること
- 年金受給に関する現況届等の提出
- ・年金記録等のチェック、修正申告
- ・臨時福祉給付金等の支給申請
- ・賃金等の適正受給に関する支援 等
- ③必要経費等の支払い、無駄な経費の削減に関すること
- ・生活に要する費用、生活費、各種手数料等、必要経費の支払い
- ・納税
- ・不要な出費(NHK放送受信料、CATV、携帯・固定電話、自動車税、光熱費等)のチェック及び解約 等
- ④不動産の管理、処分に関すること
- ・不動産登記簿謄本、権利書等重要書類の管理
- ・借地料等の支払、貸家・貸地料の回収
- ・建物の見守り
- ・空家等の管理(定期的巡回、建物の修繕、放火の虞れ・動物のたむろ等への対応、除草、殺虫剤散布、庭木等の剪定、雪下ろしの手配等)
- ・不動産の売却
- ・居住用不動産処分の許可申立 等
- ⑤保険等の管理
- ・保険等の契約、解約
- ・保険証書等の管理
- ・保険金の請求、受領 等
- ⑥悪徳商法被害からの防御
- ・契約の取り消し 等
- ・時効援用の通知
- ⑦遺産分割協議・相続に関すること
- ・ 法定相続分の確保
- ・特別代理人の選任
- ・相続財産管理人の選任申立て 等
- ⑧その他、本人の権利擁護のための財産管理に関すること
- ①日常的見守り活動
4.家庭裁判所による
後見監督-
- ①後見事務報告(原則、毎年1回)
- ・事務報告書
- ・事務経過記録
- ・財産目録
- ・収支に関する証拠書類
- ・全ての預貯金通帳、証書、取引残高報告書等の1年分のコピー
- ②報酬付与の申立て
- ③困難事案に関する裁判官からの助言
- ※家庭裁判所による後見監督は成年後見制度の信頼性を担保するもの
- ※後見人等の不正のチェック
- ①後見事務報告(原則、毎年1回)
5.本人死亡による
事務終了-
- ①ご遺体の移送
- ・葬儀業者に委託
- ・葬儀等の手配(葬儀執行者が不存在の場合)
- ②管理財産の精算
- ・葬儀費用、施設利用料・入院費用等の精算
- ③財産目録の作成
- ④相続人調査
- ・関係する戸籍一式の取得
- ・相続人の特定
- ・相続人への連絡
- ⑤管理財産の引継ぎ
- ・相続人へ管理財産等の引継ぎ
- ⑥相続財産管理人選任の申立て
- ・相続人不存在の場合、或いは相続人不明の場合
- ⑦終了事務報告(家庭裁判所)
- ⑧終了の登記(東京法務局)
- ①ご遺体の移送
成年後見制度利用に至った事例
事例01
60代男性/未婚/グループホーム入居/知的障がい/保佐類型
ご本人は、障がいをお持ちながらも一般就労してきた。雇用先の寮に住み込みながら真面目に就労してきたが、高齢になり、グループホームへ入居することになる。
ホーム入居の契約は実弟が行い、保証人にもなって、ご本人の預金通帳等を実弟が管理することになる。そのうちに、ホームの利用料等が、実弟に預けてある預金口座から引き落としができなくなる。ホームの管理者から保証人である実弟に連絡を取るも不通になっており、連絡が取れなくなってしまった。
管理者から相談を受け、ご本人が申立てて成年後見制度を利用することになる。保佐人は、早速、従来の預金口座を解約して、新たな口座を年金事務所へ届けるほか、暫くの間、ご本人の了解を得て生活費を切り詰め、何とかホームでの生活のメドがつくようになる。
ご本人と相談して、実弟を告発することまではしなかった。
事例02
60代女性/未婚/施設入所/知的障がい/後見類型
ご本人には兄と妹がおり、兄は県外で結婚して生活、妹も他市で結婚して生活しているが、ご本人との関係は特段、悪くはない。ご本人は施設で暮らしているが、両親が高齢になったことで、ご本人に後見人が選任された。その後、父親が死亡し遺産分割することになる。
忌明け法要後、老母ときょうだい3人が寄って遺産分割の協議に入る。ご本人の法律上の代理人として後見人も同席する。老母は、〝○○さん(ご本人のこと)は、施設に入っていて年金でなんとかなっているし、兄貴は街で所帯を持っているでお金がかかるやろうで、兄貴に余計に取ってもらって、母ちゃんらは少しで良い。兄貴には、母ちゃんが死んだらあとの面倒をみてもらわなあかんで……、〟等々の話しになる。
後見人は、ご本人が成年後見制度を利用している以上、法定相続分に従って遺産分割をしないと裁判所の後見監督が通らないと主張して法定相続分を受領した。
事例03
70代女性/未婚/独居/精神障がい/保佐類型
人は皆、善人だと信じているご本人の自宅には、様々な人が出入りしている。
あるときは異なった新興宗教関係者が、時間差で入れ替わり出入りしていることもあり、またある時は、近くの野菜市で売れ残った惣菜等を、ご本人に売り込むこともあった。
そのようなご本人の自宅の床の間に、ある日、金ピカの仏像が置かれていた。隣の仏間にある仏壇にはカーテンがかかっており、そのカーテンは、ほこりまみれである。このことから、ご本人は信心深くて仏像を買ったのではないことが分かる。因みに、ご本人の貯金残高は数十万円。金ピカの仏像は、それより20万円程度高い。
ご本人に、仏像を買ったことを確認すると、セールスに来た男性から買う約束をしたと言う。
ご本人の同意を得て、保佐人は、取消権を行使して契約を取り消した。
事例04
80代男性/三度の離婚歴あり/子は娘ひとり/施設入所/認知症/後見類型
ご本人は、運送業の運転業務に従事じていたこともあって各地で生活経験があり、それぞれの地方で離婚を三度繰り返してきた。60歳を過ぎて、実家のあるA県に戻ってきてアパートで独り暮らしをしていたが、70代後半で認知症を発症。アルコール依存で真冬の深夜に雪の中を裸足で徘徊していたところを警察に保護される。
本人に関係する親族には実兄がいるが、高齢のためにご本人との関わりを拒否している。二番目の妻との間にできた娘は所在すら不明。地域包括支援センターの関わりで、市長申立てによって後見人が選任された。ご本人は、行政の措置により老人介護施設へ入所となる。
後見人就任後は、ご本人の債務整理に追われる。放置されていた債務も幾つもあり、時効援用で債務整理を行う。
80代後半に、ご本人は老衰で死亡。通夜、葬儀には誰の参詣もないが、僧侶である後見人がねんごろにお勤めを行い、一人で見送りお骨も拾った。
事例05
70代男性/離婚歴有り/施設入所/認知症(中度)/後見類型
ご本人は、娘がまだ小学生の頃、ギャンブル通いが原因で離婚する。離婚後、職業を転々としていたが、脳梗塞を発症して入院となる。入院中に成年後見制度利用の相談があり、親族の申立てができないために、市長申立てとなり後見人が選任された。
後見制度利用申立て中に、ご本人は介護施設へ入所となる。後見人が施設へご本人を訪ねると、ご本人はいつも面会を喜んで下さった。
施設では落ち着いて生活をされていたが、誤嚥性肺炎で入院、そのまま死亡した。
東北地方に住んでいる娘とは、ご本人生存中に何度か連絡をとったが、ご本人のもとへ見舞うことはなかった。ご本人死亡を連絡したが、勿論、通夜にも葬儀にも参詣することはなく、後見人が官営している管理財産の引渡しの相談にも、中々応じてくれなかった。
何度かの催促で、後見人はやっと相続人である娘に初めて会ったが、娘は、〝オヤジがヤクザをしてくれたおかげで、私の青春は真っ暗だった〟と、涙を流した。
娘は、今は結婚して子どももおり幸せな暮らしを送っている、と言う。